中古トムソンベッド流通の法規制について

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みなさんこんにちは!最近お問い合わせや質問の多いのが

「ヤフオクで中古のトムソンベッドを購入したけどメンテンスを受けられるの?」

「個人の先生からベッドを買うけどどうしたらいいの?」という声です。

最近はSNSやメルカリなどのフリマアプリなどで誰でも簡単に取引ができる時代。できればいいものを安く買いたいですよね。

でも結論から先に言いますと、

個人間でのトムソンベッドの購入はやめたほうが良い

です。その理由について順を追って説明しますね。

個人間のトムソンベッド流通には問題が多い

1. 医療機器の市場流通の仕組み

まず、医療機器がどのように市場に流通するのか?その仕組みを見てみましょう。

医療機器を製造するメーカーには第3種から第1種までの医療機器を製造する免許、「医療機器製造業」と「医療機器製造販売業」という2種類の免許があり、第1種がよりクラスの高い医療機器の製造が可能になります。

医療機器製造業は医療機器を作るのに必要な免許で実際に製造を行う会社が取得します。

医療機器製造販売業は製造もしくは輸入した製品を流通させるのに必要な免許で国内流通におけるすべての品質と安全管理に責任を負います。

医療機器の流通フロー

弊社(江崎器械)を例にすると、トムソンベッドの製造業者はロイドテーブル社(外国製造業者)で弊社は製造販売業者になります。弊社は日本に輸入する製品の設計プロセスや、品質管理、市場出荷後の不具合などの情報収集が義務付けられています。

そして不具合が見つかればすぐにその医療機器を使用されている方に連絡しなければなりません。医療機器である以上、命にかかわることもありますからね。

薬機法では特にトレーサビリティ(追跡可能性)を重視して法整備が行われています。これは例えば薬害エイズのようにその薬を使用することでHIVに感染すると分かった場合にその薬がいつ、どこで、だれに販売されたかがわからないと危険を知らせることができないからです。

2. 中古トムソンベッド(医療機器)の法規制

医療機器や医薬品、医薬部外品、化粧品の有効性や安全性に関する法律が「医薬品医療機器等法」、通称「薬機法」といいます。この中に医薬品医療機器等法施行規則の条文の中に中古医療機器に関する流通の規制について明記されています。

第百七十条 高度管理医療機器等の販売業者等は、使用された医療機器を他に販売し、授与し若しくは貸与し、又は電気回線を通じて提供しようとするときは、あらかじめ、当該医療機器の製造販売業者に通知しなければならない。ただし、当該使用された医療機器が他の医療機器の販売業者等から販売、授与若しくは貸与又は電気回線を通じて提供された場合であって、当該使用された医療機器を他の医療機器の販売業者等に販売し、授与し若しくは貸与し、又は電気回線を通じて提供しようとするときは、この限りでない。
2 高度管理医療機器等の販売業者等は、使用された医療機器の品質の確保その他当該医療機器の販売、授与又は貸与に係る注意事項について、当該医療機器の製造販売業者から指示を受けた場合は、それを遵守しなければならない。

読むだけで頭が痛くなりそうな内容ですね・・・。少し整理します。

つまるところここで言われている内容は、

一度市場に流通した(誰かが使った中古品)医療機器をほかの人に販売するときは、必ず製造販売業者に連絡してね。それから製造販売業者が指示を出すけどそれに従ってね。

ということなんです。これはなぜかというと、中古品がどういう状態かわからずに市場に流通すると危険だからですね。弊社の場合だと経年劣化で交換する必要がある部品があり、それを交換し、検査をしてから納品を行います。移動をする場合も設置の際にレベリングをしないといけない機種もあります。

個人売買でどこでどのように扱われたかわからない場合は修理をお断りすることも・・・医療機器の取扱いは、厳格に法律で決まっているので必ず製造販売業者の指示を仰いでください。

製造販売業者が品質をチェックし、もう一度販売しても問題ないか確認してからでなければ何かあった時の責任が負えないですし、また前述のトレーサビリティの観点から不具合があった時に使用者を把握できないため連絡ができないと安全管理上も問題があります

3. 法律で定められた範囲

前掲の条文に「高度管理医療機器等」と書いてありますよね。ところがトムソンベッドは一般医療機器でクラスⅠに分類されます。じゃあ関係ないんじゃないの?と思われた方はとても鋭いですね~。しかーし!そのあとの条文にこう書いてあります。

第百七十八条 高度管理医療機器等の販売業者等については、第二条から第六条まで、第十五条の九及び第十八条の規定を準用する。この場合において、第二条中「様式第二」とあるのは「様式第八十九」と、第六条中「様式第五」とあるのは「様式第九十」と、第十五条の九第一項中「登録販売者として」とあるのは「第百六十二条第一項第一号又は第二項第一号に規定する」と読み替えるものとする。
2 特定管理医療機器の販売業者等については、第十五条の九、第百六十四条から第百六十七条まで及び第百六十九条から第百七十二条までの規定を準用する。この場合において、第十五条の九第一項中「登録販売者として」とあるのは「第百七十五条第一項各号列記以外の部分、第一号及び第二号に規定する」と、第百六十四条第二項、第百六十六条及び第百六十七条中「高度管理医療機器等営業所管理者」とあるのは「特定管理医療機器営業所管理者等」と読み替えるものとする。
3 特定管理医療機器以外の管理医療機器又は一般医療機器の販売業者等については、第百六十四条(第二項第一号を除く。)、第百六十五条から第百六十七条まで、第百六十九条から第百七十一条まで及び第百七十五条第三項の規定を準用する。この場合において、第百六十四条第二項中「高度管理医療機器等営業所管理者」とあるのは「特定管理医療機器以外の管理医療機器又は一般医療機器の販売業者等」と、第百六十六条及び第百六十七条中「高度管理医療機器等営業所管理者」とあるのは「従事者」と読み替えるものとする。

また頭が痛くなってしまいますが・・・ここに一般医療機器の販売者も第百六十九条から第百七十一条まで守らないとだめですよと書いてあるんですね。

それでは今回のポイントをまとめてみます。

  • 医療機器の中古品を買う場合は製造販売業者の許可がいる
  • 個人売買の場合は事前に製造販売業者に通知しないと保証が受けられないことがある

4. 追記事項

通知義務違反自体に罰則は設けられていません

ですが、医薬品医療機器等法65条8号には「その使用によって保険衛生上の危険を生じるおそれがある医療機器」の販売を禁止する旨の規定があり、これに違反した場合には3年以下300万円以下の罰金が科せられます(同法84条)。

その意味で、通知により安全性の確認が必要になり、これを怠った場合には罰則があり得ます。

詳しくは、下記URLの質疑応答をご覧ください。

公益社団法人 医療機器センター「医療機器販売・賃貸管理者/修理業責任技術者講習会における質問と回答集」

https://www.jaame.or.jp/koushuu/yakuji/y_hanbaiQ&A.htm

Q:医療機器製造販売業者に中古品の販売等に係る通知をしたところ「8年を経過した物件に関しては販売を許可しません」との回答でした。物件の使用者はリース会社から購入し、引き続き使用を希望しているケースです。この場合は使用を禁止し、物件を破棄するしかないのでしょうか?
A:薬事法施行規則第170条(同第178条第2項及び第3項により準用する場合を含む)により、販売業者等は製造販売業者からの指示を遵守する義務があります。もし当該医療機器が「その使用によって保健衛生上の危険を生ずるおそれがある」(薬事法第65条)ものであるような場合は、違反したときは同法第84条により3年以下の懲役又は300万円以下の罰金に処せられるかもしれません。
“https://www.jaame.or.jp/koushuu/yakuji/y_hanbaiQ&A.htm” から引用

※安全に使えない状態のものを市場に流通させて事故が起こった場合罰せられることがありますので、くれぐれもお気をつけください。

いかがでしたでしょうか?

中古品として市場に流通させるのにも様々な手続きが必要だということをご理解いただけたかと思います。弊社で販売する中古品はすべてコンディションチェック済みで安心です!何かご不明な点がございましたら遠慮なく担当営業スタッフにお問い合わせください。

その他、お問合せなどはこちらのフォームからお願いいたします。


この記事を書いた人:江崎 健太郎
江崎器械株式会社で代表を務めております。 トムソンベッドを30年以上取り扱う会社の三代目社長を勤めています。近年は高齢者向けトレーニングマシン「タートルジム」の開発にも携わっています。 マレーシアにて開催された、3RD.World Conference On Exercise Medicine 2019に「Think Simple In Training Elderly To Engage In Physical Exercise」という講演タイトルで登壇致しました!